塩は不要?必要?海外でも割れる意見

ナトリウム(塩分)は、猫や犬にとって軽視できない必須ミネラル。体液の浸透圧や血圧の維持、神経伝達、筋肉の収縮、腎臓のろ過機能など、生理機能のあらゆる場面で働く。

日本の飼い主は「減塩」=「身体にいい」というマーケティングに洗脳されっぱなしだが、1度その考えを改めたほうが良いかもしれない。

なぜならば、塩分は不足すれば脱水や低ナトリウム血症のリスクがあり、過剰になれば腎臓や心臓への負担につながる――つまり「入れすぎても入れなさすぎても危険」という栄養素。

では、手作り食では塩を入れるべきか?入れなくても良いのか?

答えは”何を基準に作るか”で変わる

海外コミュニティでのナトリウムの考え方

犬猫の手作り食において、塩(ナトリウム)の添加は必要なのか?この問題は海外の生食コミュニティでも議論が分かれている。その理由は、どのような食材構成で手作り食を作るかによって答えが変わるからだ。

1. Prey Model Raw(PMR)派:「塩添加は不要」

PMRの基本思想:丸ごと獲物を与える

Prey Model Raw(プレイモデルロー)派は、野生動物が自然界で食べる獲物をそのまま再現することを目指している。

  • 構成: 筋肉肉80%、骨10%、レバー5%、その他内臓5%の比率
  • 特徴: 骨・血・内臓を含む丸ごと獲物アプローチ
  • ナトリウム含有量: 自然な獲物には約80-150 mg/100 kcalのナトリウムが含まれる(%DM→エネルギー換算の推定値)

PMR派の主張:「自然界の摂取量を尊重すべき」

PMR派は、獲物そのものに自然に含まれるナトリウムで十分であり、人工的な塩の追加は不要と考える。野生の猫や犬が獲物を食べる際、血液や体液からナトリウムを摂取しているからだ。

2. BARF/レシピ設計派:「塩添加は必須」

筋肉肉中心の構成による欠乏リスク

一方、BARF(Biologically Appropriate Raw Food)やレシピ設計派は、実際の手作り食の現実を重視する。

  • 構成: 筋肉肉+一部の内臓中心(血や骨が不足しがち)
  • 問題点: 筋肉肉だけではナトリウムが不足する
  • 対策: 少量の食塩添加を推奨

推奨されるナトリウム帯域

  • 80–160 mg/100 kcalを目標とする
  • (参考:as-fed基準では Na 0.2–0.4%程度だが、水分量により変動するためmg/100 kcal基準での管理が推奨

この数値は、一般的なペットフードや自然な獲物のナトリウム含有量と一致している。

3. 実際の海外レシピ例

Lisa Pierson(Catinfo.org)のアプローチ

アメリカの獣医師Lisa Piersonは、猫の栄養学で著名な専門家で、以下のレシピを提唱している:

  • 基本構成: 鶏もも・心臓・レバー+サプリメント
  • 塩の使用: Morton’s Lite Salt(NaCl+KCl)を明記
  • 狙い: ナトリウム補給とカリウム補給の両立

UC Davis VMTH(獣医教育病院)のレシピ集(2019年)

カリフォルニア大学デービス校の獣医教育病院では:

  • ほぼすべての猫用レシピに個別設計でナトリウム源を配合
  • 理由:筋肉肉中心ではナトリウムが不足するため

 

4. PMR vs BARF:ナトリウム論争の対比表

項目 PMR派(塩不要論) BARF/レシピ設計派(塩添加論)
基本思想 自然の獲物を完全再現 栄養学的計算で最適化
食材構成 80/10/5/5(血液・体液込み) 筋肉+一部内臓(血・骨が不足しがち)
Na供給源 獲物の血液・体液・骨髄 食塩等で補う
Na含有量の目安 80–150 mg/100 kcal(換算推定) 80–160 mg/100 kcal(目標設計)
代表例 PMRコミュニティ 獣医栄養学者、Pierson、UC Davis

5. 議論の分かれ目

塩不要派の論理

  • 「獲物に沿えばOK、加工的な塩はいらない」
  • 自然界の摂取パターンを重視
  • PMRアプローチを支持

塩添加派の論理

  • 「実際の手作りは筋肉肉偏重だから、ナトリウムを補わないと危険」
  • 栄養学的な計算に基づく判断
  • 多くの栄養学者やレシピ提供者が支持

実務的には多くの専門家が「少量の塩添加は必須」という立場

海外の獣医栄養学者やペット栄養の専門家の多くは、家庭での手作り食において少量の塩添加を推奨している。これは、実際の手作り食が筋肉肉中心になりがちで、自然な獲物に含まれる血液や体液が不足するからだ。

実際の推奨例の比較

専門家・機関 推奨Na量 使用する塩 対象
Lisa Pierson
(Catinfo.org)
計算による適量 Morton’s Lite Salt
(NaCl + KCl)
UC Davis VMTH
(2019)
個別設計でNa源を配合 食塩
PMRコミュニティ 80-150 mg/100 kcal
(自然含有)
添加なし 犬・猫
一般的レンジ 100-120 mg/100 kcal 犬・猫

6. まとめ:何を基準にするかで答えが変わる

丸ごと獲物ベースなら塩不要

  • 血液、骨、内臓を含む完全な獲物を与える場合
  • ナトリウムは自然に適切な量(80-150 mg/100 kcal)が含まれる

筋肉肉ベースなら塩添加が推奨

  • 筋肉肉中心の手作り食の場合
  • 目標:Na ≈ 100–120 mg/100 kcalを目安に補強

この数値は実際に一般的なフードや獲物モデルの数値と一致

海外でも日本でも、結局のところ答えは同じ:「何を基準に作るか」によってナトリウムの必要性が決まる。丸ごと獲物を再現するPMRスタイルなら塩は不要だが、現実的な筋肉肉ベースの手作り食なら、適切な塩の添加が動物の健康維持に重要となる。


出典

  • Raw Fed & Nerdy: PMR Diets for Dogs and Cats
  • CatInfo.org (Dr. Lisa Pierson)
  • UC Davis School of Veterinary Medicine
  • Perfectly Rawsome
  • Journal of the American Veterinary Medical Association
  • Various international raw feeding communities and nutritional analyses
error: Content is protected !!