参考:猫におけるリンの吸収率|「リンの総量」ではなく「リンの種類」に注目すること。
要約
研究の概要
- Waltham Petcare Science Instituteが2021年に発表した、健康な成猫75匹を対象とした30週間(約7ヶ月)の給餌試験
- 猫における無機リンの「無毒性量(NOAEL)」を科学的に確立することが目的
主要な発見
- 無機リン(STPP)1000g/1000kcalを30週間給餌しても、健康な成猫の腎機能・骨・全身状態に悪影響なし
- 総リン量の安全上限はCa:P比に依存:
- Ca:P比 1.0の場合:総リン4000mg/1000kcalまで
- Ca:P比 1.3の場合:総リン5000mg/1000kcalまで
- Ca:P比が高いほど、リンの影響を緩和できる(腸管での吸収抑制)
重要な注意点
- 対象は健康な成猫のみ(腎疾患のある猫、高齢猫には適用外)
- 使用したのはドライフード形式のみ
- 試験した無機リン源はSTPP(トリポリリン酸ナトリウム)のみ
- ナトリウム系無機リン(リン酸ナトリウムなど)は、より腎臓への影響が大きい可能性あり
飼い主への実用アドバイス
- 無機リン量が表示されている場合、1000g/1000kcal以下が望ましい
- Ca:P比が1.3以上あれば、総リンが多少高くても相対的に安全
- Ca:P比1.0未満の製品は避ける
- 原材料表示で「リン酸〜」「ポリリン酸」などの記載に注目
- 不明な場合はメーカーに問い合わせる
この研究が示さないこと
- 数年〜一生にわたる長期的影響
- 腎疾患のある猫での安全性
- ウェットフードでの影響
- STPP以外の無機リン源(特にナトリウム系)の安全性
3行サマリー
- 無機リン1g/1000kcalまでは安全(健康な成猫の場合)
- カルシウムとのバランス(Ca:P比)を上げると、より安全に
- 腎臓に不安のある猫・高齢猫では、さらに慎重に
1. 「どこまでなら安全か」という問いへの挑戦
キャットフードに含まれる無機リンが腎臓に悪影響を及ぼす可能性――この懸念は、2010年代以降の研究によって次々と裏付けられてきた。しかし、飼い主やメーカーが直面する最も切実な問いには、明確な答えがなかった。
「いったい、どこまでなら安全なのか?」
過去の研究は、無機リンの「危険性」を示すことには成功していた。3.6g/1000kcal以上で腎機能低下が観察される[1]、0.5g/1000kcal以上の無機リン添加で血漿リン濃度が上昇する[2]――しかし、これらはいずれも「ここから危ない」という下限を示すものであり、「ここまでなら大丈夫」という安全な上限を示すものではなかった。
2021年、Waltham Petcare Science Instituteを中心とする研究チームが、この問いに正面から取り組んだ[3]。75匹の健康な成猫を対象とした7ヶ月間の給餌試験――これは、猫の無機リン摂取における「無毒性量(NOAEL)」を科学的に確立しようとした、業界で最も包括的な長期研究の一つである。
2. NOAELとは何か、なぜ必要なのか
無毒性量(NOAEL)の定義
NOAELは「No Observed Adverse Effect Level」の略で、日本語では「無毒性量」または「無有害作用量」と訳される。これは毒性学や栄養学において、観察可能な有害作用が認められない最大用量を意味する。
簡単に言えば、「この量以下なら、悪影響が出ないと科学的に確認された安全な上限」である。
なぜ猫でNOAELが必要だったのか
従来の研究には、以下のような限界があった。
1. 短期的な観察
多くの研究は4週間〜数ヶ月程度の短期間で、長期的な影響が不明だった。
2. 極端な条件設定
「どこから危険か」を調べるため、意図的に高リン食(3.6g/1000kcal以上)やCa:P比が極端に低い食餌(0.3〜0.6)を使用していた。これは現実の商業食とかけ離れている。
3. 実用的な指針の欠如
飼い主やメーカーが知りたいのは、「日常的に与えても問題ない量」である。しかし、既存研究からは「この範囲なら安全」という実用的な数値を導き出せなかった。
NOAELを確立することで、科学的根拠に基づいた安全な上限値を提供できる。これは、フードメーカーの製品設計にも、飼い主のフード選択にも、直接的な指針となる。
Ca:P比という変数
リンの影響は、カルシウムとの比率(Ca:P比)によって大きく変わることが分かっていた[2][4]。Ca:P比が1.0未満だと、リンの吸収が増加し、悪影響が出やすい。逆に、Ca:P比が高ければ、リンの影響を緩和できる可能性がある。
したがって、NOAELを確立するには、無機リンの量とCa:P比の両方を考慮する必要があった。
3. 7ヶ月給餌試験の全貌
適用範囲の重要な注意:
本研究の対象は健康な成猫のみであり、使用したフードはドライ形態に限定される。腎疾患を持つ猫、高齢猫、またはウェットフードへの結果の外挿には慎重であるべきだ。
研究デザイン
対象:
- 健康な成猫75匹(各グループ25匹)
- 年齢や性別をバランスよく配置
期間:
- 30週間(約7ヶ月)の給餌試験
- その後4週間のウォッシュアウト期間
研究形式:
- ランダム化並行群間試験
- すべての猫を定期的に健康チェック
3つの試験グループ
| グループ | 総リン | 無機リン(STPP※) | Ca:P比 | 有機リン |
|---|---|---|---|---|
| コントロール | 1.4g/1000kcal | なし | 0.97 | 1.4g |
| 中程度テスト | 4.0g/1000kcal | 1.0g/1000kcal | 1.04 | 3.0g |
| 高テスト | 5.0g/1000kcal | 1.0g/1000kcal | 1.27 | 4.0g |
※STPP = トリポリリン酸ナトリウム(sodium tripolyphosphate)、高い水溶性を持つ無機リン塩
設計の妙: 両テストグループとも無機リン量は同じ(1g/1000kcal)に固定。違いは総リン量とCa:P比のみ。これにより、「無機リン1g/1000kcalの安全性」と「Ca:P比の影響」を同時に評価できる。
無機リン源についての注意: 本研究で使用したのはSTPP(トリポリリン酸ナトリウム)のみである。過去の研究では、ナトリウム系無機リン(特にリン酸ナトリウム、NaH2PO4)はカルシウム系無機リンよりも腎臓への影響が大きい可能性が示されている[5][6]。したがって、すべての無機リン源に対して同じNOAELが適用できるとは限らない。
測定した健康指標
研究チームは、ベースライン(試験開始前)および定期的な時点で、以下を測定した。
腎機能の評価:
- GFR(糸球体濾過率):ヨードヘキソールクリアランス法で測定。腎機能の最も信頼できる指標
- 血清クレアチニン、尿素窒素
- 尿検査(微量アルブミン尿、糖尿、比重など)
- 腎超音波検査(結石、エコー輝度の変化)
ミネラル代謝の評価:
- 血漿リン濃度(空腹時・食後)
- 血清カルシウム濃度(総カルシウム・イオン化カルシウム)
- FGF23(線維芽細胞増殖因子23):リン代謝の調節ホルモン
- PTH(副甲状腺ホルモン):カルシウム・リン代謝の主要調節因子
骨の健康:
- 骨密度測定(DXA法:dual-energy X-ray absorptiometry)
全身状態:
- 体重、食欲、活動性、一般的な臨床徴候
主要な結果:NOAELの確立
結果1:腎機能への悪影響は認められず
30週間の給餌期間中、いずれのテストグループでも、腎機能に悪影響は観察されなかった[3]。
- GFRは全グループで正常範囲を維持
- 血清クレアチニンと尿素は若干上昇したが、これは高タンパク質食の影響と考えられた(後述)
- 腎超音波検査で、臨床的に重要な異常所見なし
- 微量アルブミン尿や糖尿の発生率に差なし
結果2:骨の健康は維持された
骨密度に悪影響はなく、高リン・高カルシウム食でも骨格系の健康は保たれた[3]。
結果3:ミネラル代謝ホルモンの反応はCa:P比依存的
興味深いことに、Ca:P比によって異なるホルモン応答が見られた。
中程度テスト(総リン4g、Ca:P 1.04):
- FGF23が12週目以降、有意に上昇
- 空腹時血漿リン濃度が低下(FGF23の作用による)
- カルシトリオール(活性型ビタミンD)が低下
高テスト(総リン5g、Ca:P 1.27):
- FGF23の上昇は統計的に有意でなかった
- より高いCa:P比が、リンの影響を緩和したと考えられる
これは、Ca:P比1.3程度であれば、無機リン1g/1000kcalによるホルモン系への影響を最小化できることを示している。
結果4:リン・カルシウムバランスの変化
テストグループでは、リンとカルシウムの尿中排泄量が増加し、バランスが正の方向にシフトした[3]。特に高テストグループでは糞便中リン排泄量も増加しており、これは腸管でのリン吸収が抑制されたことを示している。
ウォッシュアウト期間の重要な発見
30週間の試験後、全ての猫を通常の商業食(総リン2.34g/1000kcal、Ca:P 1.3)に4週間切り替えた。
クレアチニンと尿素の正常化: テストグループで若干上昇していた血清クレアチニンと尿素は、ウォッシュアウト期間後にコントロール群と同レベルまで低下した[3]。
これは極めて重要な知見である。数値の上昇が真の腎機能低下であれば、食事を変えても改善しないはずだ。しかし実際には正常化した。つまり、観察された数値の変化は、高タンパク質・高リン食による一時的な代謝の変化であり、不可逆的な腎障害ではなかったことを意味する。
結論:確立されたNOAEL候補
この研究は、以下のNOAEL候補を提案した[3]:
- 無機リン(STPP):1g/1000kcal
- 総リン:Ca:P比に応じて
- Ca:P比 1.0の場合:4g/1000kcalまで安全
- Ca:P比 1.3の場合:5g/1000kcalまで安全
これは、健康な成猫にドライフード形式でこの量を30週間給餌しても、腎臓・骨・全身状態に観察可能な悪影響がないことを科学的に実証した数値である。
4. 過去の研究との対比とCa:P比の影響
過去の研究との比較
Waltham 2021年研究を、過去の主要研究と比較すると、その意義がより明確になる。
Pastoor et al. 1995[1]:
- 総リン3.6g/1000kcal、Ca:P 0.3
- 4週間給餌
- 結果:クレアチニンクリアランスの低下
Dobenecker et al. 2018(JFMS)[7]:
- 高リン食(約3.6g/1000kcal以上と推測)、低Ca:P
- 28日間給餌
- 結果:微量アルブミン尿、クレアチニンクリアランスの低下
Dobenecker et al. 2018(JAPAN)[6]:
- ナトリウムモノリン酸塩 vs カルシウムモノリン酸塩
- 結果:ナトリウム塩群で腎リン排泄増加、13匹中7匹で糖尿
Alexander et al. 2019[8]:
- 総リン3.6g/1000kcal以上、無機リン(NaH2PO4)1.5g以上、Ca:P <1.0
- 4週以内に摂食低下・嘔吐(不耐性)を認め、その後の評価でGFR低下や蛋白尿など腎の構造・機能変化が報告された
- さらに28週・総P 3.6 g/1000 kcal(Ca:P 0.9)では腎結石および構造変化も確認された
Waltham 2021[3]:
- 総リン4〜5g/1000kcal、無機リン(STPP)1g、Ca:P 1.0〜1.3
- 30週間給餌完遂
- 結果:腎機能に悪影響なし
何が違ったのか?
過去の研究で腎障害や不耐性が見られたのは、以下の要因が組み合わさったためと考えられる。
- 極端に低いCa:P比(0.3〜0.6)
- 無機リンの量が多すぎる(1.5g以上)
- ナトリウム系無機リンの使用(特にリン酸ナトリウム)
- 総リン量も高い
Waltham研究は、無機リンを1g/1000kcalに抑え、Ca:P比を適正に保ち、STPP(比較的影響が小さい可能性のある無機リン源)を使用することで、長期間でも安全に給餌できることを示した。
Ca:P比による実例比較
同じ無機リン1g/1000kcalでも、Ca:P比によって反応が異なる様子が観察された。
ホルモン応答の方向性:
- コントロール:FGF23、空腹時血漿リンともに大きな変化なし
- 中程度テスト(Ca:P 1.04):FGF23が有意に上昇、空腹時血漿リンが有意に低下
- 高テスト(Ca:P 1.27):FGF23の上昇は統計的に有意でなく、血漿リンも大きな変化なし
中程度テストでは、FGF23が上昇することで血漿リンを低く抑える代償機構が働いた。一方、高テストでは、より高いCa:P比によってリンの吸収が抑制され、FGF23を大きく上昇させる必要がなかったと考えられる[3]。
メカニズムの考察
Ca:P比が高いと、なぜリンの影響が緩和されるのか?
腸管での複合体形成: カルシウムとリンは腸管内で不溶性の複合体(リン酸カルシウム)を形成し、吸収されずに排泄される[9]。マグネシウムも同様の効果を持つ。
リンの主要輸送体はNaPi-IIbなど、カルシウムは主にTRPV6など別の経路で吸収されるが、Ca:P比が高いと腸管内でリン酸カルシウムが形成されやすく、結果としてリンの吸収が下がると考えられる[3]。
実際、Waltham研究では、高Ca:P比の高テストグループで糞便中リン排泄量が多く、これは腸管での吸収が抑制されたことを示している[3]。
5.商業食への応用と研究の限界
実用的な意義
この研究結果は、フードメーカーと飼い主の両方に具体的な指針を提供する。
フードメーカーにとって:
安全な製品設計の基準ができた。
- 無機リン(特にSTPP)は1g/1000kcal以下に抑える
- Ca:P比を1.3以上に設計すれば、総リンは5g/1000kcalまで許容可能
- Ca:P比が1.0程度なら、総リンは4g/1000kcalまでに抑えるべき
- ナトリウム系無機リン(特にリン酸ナトリウム)は、STPPよりも腎臓への影響が大きい可能性があるため、より慎重な使用が必要
飼い主にとって:
フード選択の判断材料が得られた。
- 無機リン量が表示されている場合、1g/1000kcal以下が望ましい
- Ca:P比が1.3以上なら、総リンが多少高くても相対的に安全
- Ca:P比が1.0未満の製品は避ける
- 原材料表示で「リン酸ナトリウム」「リン酸二水素ナトリウム」「ポリリン酸ナトリウム」などナトリウム系無機リンの記載がある場合は特に注意
飼い主向け実用アドバイス:
無機リン量が表示されていない場合の見分け方:
- 原材料名に注目:「リン酸〜」「〜リン酸」「ポリリン酸」「ピロリン酸」「メタリン酸」など
- 「ミネラル類」と包括表記されている場合、メーカーに問い合わせる
問い合わせ時の質問テンプレート: 「こちらの製品について、以下を教えていただけますか?
- 無機リン(添加リン)の量(g/1000kcalまたは%)
- 使用している無機リン源の種類(トリポリリン酸ナトリウム、リン酸カルシウムなど)
- カルシウムとリンの比率(Ca:P比)」
中道的視点:過度な心配も、盲信も避ける
この研究結果をどう受け止めるべきか?
楽観的すぎる解釈: 「無機リン1g/1000kcalまでなら完全に安全だから、気にしなくていい」
これは危険である。研究対象は健康な成猫であり、既に腎機能が低下している猫や高齢猫には当てはまらない。また、30週間という期間は長いが、猫の一生(15年前後)から見れば一部に過ぎない。
悲観的すぎる解釈: 「無機リンは少しでも危険だから、完全にゼロにすべきだ」
これも現実的ではない。無機リンは加工食品では避けがたく、栄養基準を満たすために必要な場合もある。研究は、「適切な量とバランスなら安全」ということを示している。
バランスの取れた見方:
無機リンは、量とCa:P比をコントロールすれば、健康な猫では許容できる。ただし、以下の場合はより慎重であるべきだ。
- 腎機能が既に低下している猫
- 高齢猫(潜在的な腎機能低下のリスク)
- 長期的な影響(数年〜一生)は未確認
- ナトリウム系無機リンは特に注意
研究の限界:何が分からないままか
Waltham研究は画期的だが、以下の限界がある。
1. 対象は健康な成猫のみ
腎疾患のある猫、または腎機能が低下し始めた高齢猫での安全性は別途検証が必要である。実際、別の研究(Schauf et al. 2021[10])では、早期CKDの猫では中等度のリン制限とCa:P比の調整が病態管理に有効であることが示されている。過度な低リン・高Ca:P食は高カルシウム血症を引き起こす可能性があるため、CKD猫では慎重なバランス調整が必要だ。
2. 30週間という期間
7ヶ月は長期だが、猫の平均寿命(15年程度)から見れば、その約4%に過ぎない。数年〜一生にわたる影響は不明である。
3. STPP以外の無機リン源
試験ではSTPPのみを使用した。他の無機リン、特にリン酸ナトリウム(NaH2PO4)やリン酸二水素ナトリウムなどのナトリウム系無機リンの安全性は別途評価が必要である。過去の研究では、ナトリウム系無機リンはカルシウム系(リン酸カルシウムなど)よりも腎臓への影響が大きい可能性が示唆されている[5][6]。
4. ドライフード形式のみ
試験食はすべてドライフードだった。ウェットフードでは水分含量が高く、リンの吸収動態が異なる可能性がある。
5. 個体差
平均的には問題なくても、個体によっては感受性が高い猫がいる可能性は排除できない。
今後の研究課題
Waltham研究は、新たな問いを生み出した。
- より長期間(数年)の給餌試験は実施可能か?
- 腎機能低下猫でのNOAELは、健康猫と同じか?
- 他の無機リン源(特にナトリウム系)のNOAELは?
- ウェットフードでのNOAELは異なるか?
- 遺伝的に腎疾患リスクが高い猫(例:ペルシャ、メインクーン)では?
6. 安全な量は分かった。しかし、それで十分?
Waltham 2021年研究は、猫における無機リン(STPP)の「安全な上限」を科学的に示した。無機リン1g/1000kcal、Ca:P比1.0〜1.3で総リン4〜5g/1000kcalという具体的な数値は、業界に明確な指針を与えた。
30週間という長期給餌で腎機能に悪影響がなかったという事実は、適切に管理された無機リン摂取が、健康な成猫にとって許容可能であることを示している。Ca:P比の重要性も明確になり、単に「無機リンを避ける」のではなく、「バランスを考える」という視点の必要性が裏付けられた。
しかし、この研究結果は、すべての猫、すべての状況に当てはまる普遍的な答えではない。研究対象は健康な成猫であり、腎疾患のある猫や高齢猫には、より慎重なアプローチが求められる。30週間という期間は長いが、猫の一生全体から見れば限られている。数年、十数年という長期的な影響はまだ未知数。
また、使用した無機リン源はSTPPのみであり、ナトリウム系無機リン(特にリン酸ナトリウム)については、より慎重な評価が必要である可能性がある。
飼い主として、この研究結果をどう受け止めるべきか?
「1g/1000kcal以下なら安全」という数値を盲目的に信じて、他の要素を無視するのは賢明ではない。しかし同時に、「無機リンは絶対悪」として過度に恐れる必要もない。重要なのは、総合的なバランスを見ること。
□猫は健康な成猫だろうか、それとも腎機能に不安があるだろうか?
□与えているフードのCa:P比は適切だろうか?
□無機リンの量は表示されているだろうか、それとも「ミネラル類」として隠されているだろうか?
□使用されている無機リン源は何だろうか?ナトリウム系ではないだろうか?
科学は「ここまでなら大丈夫」という線を引いた。しかし、その線の内側にいることで満足すべきだろうか、それとも、より安全側に寄った選択をすべきだろうか?
この「安全な上限」は、猫にとって本当に十分なのだろうか?
7. 出典
[1] Pastoor, F. J. H., et al. (1995). Increasing phosphorus intake reduces urinary concentrations of magnesium and calcium in adult ovariectomized cats fed purified diets. Journal of Nutrition, 125(6), 1334–1341.
[2] Coltherd, J. C., et al. (2019). Not all forms of dietary phosphorus are equal: An evaluation of postprandial phosphorus concentrations in the plasma of the cat. British Journal of Nutrition, 121(3), 270–284.
[3] Coltherd, J. C., et al. (2021). Towards establishing no observed adverse effect levels (NOAEL) for different sources of dietary phosphorus in feline adult diets: Results from a 7-month feeding study. British Journal of Nutrition, 126(11), 1626–1641.
[4] Coltherd, J. C., et al. (2022). Dietary calcium to phosphorus ratio affects postprandial phosphorus concentrations in feline plasma. British Journal of Nutrition, 128(9), 1689–1699.
[5] Alexander, J., et al. (2019). Effects of the long-term feeding of diets enriched with inorganic phosphorus on the adult feline kidney and phosphorus metabolism. British Journal of Nutrition, 121(3), 249–269.
[6] Dobenecker, B., et al. (2018). Renal phosphorus excretion in adult healthy cats after the intake of high phosphorus diets with either calcium monophosphate or sodium monophosphate. Journal of Animal Physiology and Animal Nutrition, 102(5), 1759–1765.
[7] Dobenecker, B., et al. (2018). Effect of a high phosphorus diet on indicators of renal health in cats. Journal of Feline Medicine and Surgery, 20(4), 339–343.
[8] Alexander, J., et al. (2019). Effects of the long-term feeding of diets enriched with inorganic phosphorus on the adult feline kidney and phosphorus metabolism. British Journal of Nutrition, 121(3), 249–269.
[9] Pastoor, F. J. H., et al. (1995). Bioavailability of phosphorus in heat-sterilized cat food. Journal of Animal Physiology and Animal Nutrition, 74, 40–48.
[10] Schauf, S., et al. (2021). Clinical progression of cats with early-stage chronic kidney disease fed diets with varying protein and phosphorus contents and calcium to phosphorus ratios. Journal of Veterinary Internal Medicine, 35(6), 2797–2811.
