実は私の周りには「動物を絶対に飼わない」そして「もう、動物を絶対に飼わない」と決めている人たちが多数いる。そう聞くと、もうピンッとくる.。
両者とも理由は同じだ。「費用が明確じゃなさすぎる」からだと。
データはもう出ている、日本だけが「医療費のブラックボックス」で自滅しているのだ。
ペットが減っているのに、動物病院は増えている → 1医院あたりの患者数は減少中 → “美味しい市場”ではなく“無秩序な過当競争”への入口ではないか。しかし、これは業界が招いた結果でもある。
数字が示す現実
ペットブームは既に終わっていることに気が付いているだろうか?統計が突きつける現実は厳しい。
犬の飼育頭数は2013年の871万頭から2024年には680万頭へと、わずか11年で22%も減少した。
191万頭減――これは仙台市や広島市の人口に匹敵する規模だ。
一方、猫は2013年の841万頭から2024年には916万頭と9%増加しているが、2018年の885万頭をピークに横ばいが続いている。犬猫合計でも1,600万頭弱で頭打ちとなり、「ペットブーム」の幻想は終わりを迎えている。
飼い主が犬を選ばなくなったのではない。業界が選ばれなくなったのだ。
これは単なる一時的な現象ではない。構造的な問題が根底にある。
飼わない理由のトップは「お金」
なぜ人々はペットを飼わなくなったのか。調査結果は明快だ。
1位は「世話の大変さ」、特に犬の散歩が挙げられる。しかし2位の「経済的負担、特に病気になったときの医療費」こそが核心だ。
現実を見よう。ペットの生涯医療費は100万円を超えるのが普通になった。高齢ペットなら一度の入院・手術で30〜50万円、慢性疾患の通院で月数万円がかかる。
「飼いたい。でも病気になったら払えない。だから最初から諦める」
これが今の日本の飼い主候補の現実だ。多くの人が「病気になったら払えない」という恐怖を抱き、最初から飼うことを諦めている。「命を飼う勇気」を奪っているのは、業界の不透明さそのものである。
これが飼育数減少の最大要因だ。
業界の盲点――自滅構造
獣医療界は何をしてきたか。高度化という名の高額化に突き進んだ。
CT、MRI、抗がん剤治療、透析――確かに技術は素晴らしい。しかし料金はブラックボックスのまま、「命の値段に見積書はないのか」という飼い主の切実な声に耳を塞いできた。結果、飼い主は恐怖で病院を避けるようになった。
一方、欧米では予防医療・保険普及が進み、「飼わない理由=医療費」とはならない。日本だけが「医療費のブラックボックス」で自滅している。
悪循環が始まる:
- 病気になる → 高額請求される → 口コミで恐怖が広がる
- 「最初から飼わない」人が増える → 飼育頭数が減る
- 市場が縮小する → 業界全体が苦しくなる
医療の高度化が、皮肉にも飼育数を減らし、業界の未来を縮めている。これを自滅構造と呼ばずして何と呼ぶのか。
正直な声に耳を傾けてほしい
「獣医師の意識が変わってほしい」――これは卑しい心から出た言葉ではない。飼い主として、そして業界の将来を案じる者としての率直な感情だ。
データは嘘をつかない。犬の飼育頭数は11年で191万頭も減った。これでもまだ現実を受け入れられないのか。
業界が耳を塞ぎ続ければ、待っているのは更なる市場縮小である。
既存の予測・報道
複数ソースからの見通しは以下のとおり:
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Diamond(2024年)の記事では、「このまま現在の減少トレンドが続くと、2040年までに犬の飼育頭数が現在のほぼ半分になる可能性がある」 と指摘。ダイヤモンド・オンライン
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Agriculture and Agri-Food Canada のレポートでは、日本の「犬猫を含むペット全体」の数は、2019年〜2023年で年率複合成長率(CAGR)約 +0.6%で推移してきたが、2028年には微減(CAGR 約 −0.3%)に転じ、犬猫飼育数は犬 620 万/猫 860 万頭あたりが予想されている。agriculture.canada.ca
選択肢は業界の手にある
解決策は存在する。しかし実行するかどうかは業界次第だ。
予防医療への重点シフトが第一歩だ。病気になってから高額治療を提案するのではなく、病気になる前に守る。軽度のうちに対応できれば、飼い主の心理的・経済的負担は劇的に減る。
費用の透明化も必須だ。料金がブラックボックスである限り、「怖いから行かない」の連鎖は止まらない。見積もりの標準化、料金体系の明確化が信頼回復の鍵となる。
支払い方法の多様化も重要だ。保険制度の充実、分割払いの整備、場合によっては公的補助との連携も検討すべきだろう。
「飼いたいけど怖い」を「安心して飼える」に変えることができれば、飼育数減少に歯止めをかけることは可能だ。
意識が変われば何が起きるか
獣医師の意識が変わった時、業界に何が起きるか想像してみよう。
予防医療と定期検診が中心となれば、重篤な病気になる前に対応でき、結果的に飼い主の負担は軽くなる。費用が透明化されれば、飼い主の信頼は向上し、通院頻度も上がるだろう。保険や分割払いが整備されれば、「経済的に厳しいから諦める」人も減る。
つまり、飼育頭数の回復と業界の持続的成長が両立する。
現実との乖離
しかし現実はどうか。
獣医業界は依然として医療高度化に引っ張られている。MRIや抗がん剤で他院との差別化を図り、「高単価で回収」するビジネスモデルから抜け出せずにいる。
データが示す危機的状況を目の前にしても、現場での意識変革にはまだ時間がかかりそうだ。
最後に
データはもう十分だ。これ以上の言い訳は許されない。
選択の時は今ではないか。
このまま高度医療偏重を続けるか、それとも予防重視・透明化へと舵を切るか。前者を選べば市場縮小は加速し、後者を選べば飼育頭数回復の可能性が開ける。
犬猫の飼育数減少は、業界が招いた結果だ。そしてその解決も、業界の手にかかっている。
獣医師一人ひとりの意識が変われば、この自滅構造から脱却できる。飼い主の「安心」を取り戻し、ペット業界全体の未来を明るくすることができる。
犬猫の減少を止めるのは”飼い主の愛情”ではなく”業界の決断”ではないだろうか。
comment|私もこの医療費のブラックボックス化、実体験している。A病院では16万の検査費見積もりが、B病院では3万だったのだ。(B病院では獣医が不要なオプション検査を提案しなかったのもあるが)
しかも、飼い主は目の前で病気の説明を聞きショックと恐怖で平常心ではないところに、こういったことをされると不信感しかない。
「パイを奪い合う」段階ならまだ競争の範囲内だが、パイ自体が消滅していくのを見ながら、それでも高単価路線で奪い合いを続けているのが現状だ。因みに先の高額見積もりを提出したA病院、かなり閑散とし始めているのも目の当たりにしているし、よくない評判も立ち始めてきている。
犬だけで191万頭減=業界全体の「お客様」が大規模に消失
- 病院同士で「うちはCTがある」「うちは最新の抗がん剤を」と高度化競争
- 料金はブラックボックスのまま
- 結果:「怖くて最初から飼わない」人がさらに増える
縮小するパイをさらに縮小させているという、まさに自滅構造。差別化を取り違えすぎではないのか。
本来なら「パイを大きくする」方向=予防医療で安心して飼える環境を作る、透明な料金で信頼を回復する、みたいな発想になるはず・・・では、、、と思うが。
データ出典
一般社団法人ペットフード協会等の調査を基にしたデータ。人為的な誤差・調査方法の変更点に注意。
| 年 | 犬の飼育頭数(千頭/百万頭) | 猫の飼育頭数(千頭/百万頭) |
|---|---|---|
| 2013 | 8,714 千頭 ≒ 8,714,000 頭 (一般社団法人ペットフード協会) | 8,409 千頭 ≒ 8,409,000 頭 (一般社団法人ペットフード協会) |
| 2014 | 8,200 千頭 (一般社団法人ペットフード協会) | 8,425 千頭 (一般社団法人ペットフード協会) |
| 2015 | 7,994 千頭 (一般社団法人ペットフード協会) | 8,297 千頭 (一般社団法人ペットフード協会) |
| 2016 | 8,008 千頭 (WEPET(ウィペット)) | 8,333 千頭 (WEPET(ウィペット)) |
| 2017 | 7,682 千頭 (WEPET(ウィペット)) | 8,672 千頭 (WEPET(ウィペット)) |
| 2018 | 7,616 千頭 (WEPET(ウィペット)) | 8,849 千頭 (WEPET(ウィペット)) |
| 2019 | 7,579 千頭 (WEPET(ウィペット)) | 8,764 千頭 (WEPET(ウィペット)) |
| 2020 | 7,341 千頭 (WEPET(ウィペット)) | 8,628 千頭 (WEPET(ウィペット)) |
| 2021 | 7,106 千頭 (一般社団法人ペットフード協会) | 8,946 千頭 (WEPET(ウィペット)) |
| 2022 | 7,053 千頭 (一般社団法人ペットフード協会) | 8,837 千頭 (WEPET(ウィペット)) |
| 2023 | 6,844 千頭 (一般社団法人ペットフード協会) | 9,069 千頭 (一般社団法人ペットフード協会) |
| 2024 | 6,796 千頭 (いきもののわ) | 9,155 千頭 (いきもののわ) |
データで見える飼育数減少 vs 病院数増加
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動物病院(小動物診療施設)の数は年々増加してる
農林水産省「飼育動物診療施設の開設届出状況」で、動物病院の施設数は2004年〜2024年で一貫して上昇。2004年:9,245施設 → 2024年:12,846施設。WEPET(ウィペット)+1 -
犬の飼育頭数は減少中、猫は増加だが横ばい〜緩やかな増加
さっき出した通り、犬は2013年から2024年で約22%減少。猫はピーク後、頭打ち感がある。Fujifilm+2WEPET(ウィペット)+2 -
「1動物病院あたりの犬猫頭数」は確実に減ってきてる
動物病院数が増えて、飼育動物数は減るか横ばいなら、1病院あたりの担当ペット数が下がる。実際、ある業界分析でこの傾向が指摘されてる。Fujifilm -
市場規模/医療支出は拡大傾向
飼育数は減っても、1頭あたり医療にかかるコストや、ペットを家族扱いするニーズの増加で「動物医療サービス」の需要・支出は上がってる。note(ノート)+2fundbook(ファンドブック)事業承継・M&A仲介サービス+2
ギャップが意味する問題点
この現象には複数の裏側がある:
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競争過当化
動物病院数が多すぎて、設備も差別化もない小規模病院同士の競争が厳しい。患者(飼い主)がより条件・信頼を重視するようになってきてる。veterinario.works+1 -
利益モデルのシフト
飼育数減でも、「高度医療・専門医療・検査数を増やす・1頭あたりの単価を上げる」方向で収益を確保しようという動き。fundbook(ファンドブック)事業承継・M&A仲介サービス+1 -
地域間格差・都市集中
増えてる病院の多くは都市部や人口密集地域。地方ではまだ足りない・アクセスしにくいケースも。動物病院経営コンサルティングなら船井総合研究所+1 -
診療内容・付加サービスの多様化
ただ診療するだけでなく、専門性を持たせたり、夜間・救急対応・高度医療・予防医療の提供など、サービス領域で差別化する病院が生き残りをかけて増えてる。pet-hospital.org+1
