獲物モデル200kcal vs NRC 200kcalでざっくり比較

土俵の違う2つを比べてみた

この2つはそもそも土俵が違う

  • NRCは「合成フードを保証するための学術ライン」

  • 獲物モデルは「自然界での平均的な摂取」
    だから数値がズレるのは当然。

「米国(USDA)」と「日本(八訂成分表)」での数値差は、ビタミンAに限らず臓器系では大きすぎる件について。

なぜこんなに差が出るのか

  1. 測定法の違い

    • USDA → ビタミンAを「レチノール(活性型)」としてだけ測定しているケースが多い。
      → プリフォームA(レチノールエステル)やプロビタミンAカロテノイドはカウント外になりがち。

    • 日本(八訂) → より広義に「レチノール当量(RAE)」で算出しており、代謝可能なエステル類も含む。

  2. 飼料の違い

    • 米国で流通する鶏ハツと、日本で測定に使われた鶏ハツは品種・飼料が違う。

    • 特に鶏のビタミンA含量は「飼料にビタミンA添加しているか」で大きく変わる。
      (養鶏業ではビタミンA添加が一般的で、日本の飼料は高め設定のことが多い)

  3. 測定時代の違い

    • USDAの古いデータは「ハツ=ほぼゼロ」という測定精度限界の影響。

    • 日本の八訂(2023年)は比較的新しい分析データを反映していて、感度も上がっている。

信頼性はどちらが上か?

  • 一貫性の観点
    日本の市販食材(国産鶏ハツ)で手作りしているなら、日本食品標準成分表(八訂)を優先するのが筋。
    → その方が「実際に手に入る食材の実測値」に近い。

  • 汎用性の観点
    USDAは国際的に広く使われるが、データが古く、臓器系のビタミンAは「過小評価」されやすい傾向がある。
    (だから海外の生食レシピはレバー依存が強い)

獲物モデル 200kcal vs NRC 200kcal(成猫・維持)ざっくり比較

※獲物モデル200kcalを構成する実使用量(ざっくり)

部位 使用量
鶏むね(皮なし) 128.5 g
鶏ハツ 32.3 g
鶏レバー 5.0 g

獲物モデルvsNRC

指標 単位 獲物モデル(200kcal) NRC基準(200kcal換算)
たんぱく質 g 35.56 8–10-上限記載なし
脂質 g 7.61 下限記載なし-4.5–16.5
-アラキドン酸 g 0.033 下限記載なし-0.003–0.1
-リノール酸 g 0.257 下限記載なし-0.28–2.76
-EPA.DHA g 0.005(EPAほぼ0) 下限記載なし-0.005-上限記載なし
食塩相当NaCl※3.4 g 227
Na(ナトリウム) mg 89.53 32–34-上限記載なし
Cl(塩化物)※3.4 mg 138 下限記載なし-48-上限記載なし
K(カリウム) mg 569.37 下限記載なし-260-上限記載なし
Ca(カルシウム) mg 7(骨かサプリ補完すべし) 80–144-上限記載なし
Mg(マグネシウム) mg 42.36 10–20-上限記載なし
P(リン) mg 346.52 70–128-上限記載なし
Fe(鉄) mg 2.44 下限記載なし-4-上限記載なし
Zn(亜鉛) mg 1.78 下限記載なし-3.7-上限記載なし
Cu(銅) mg 0.143 下限記載なし-0.24-上限記載なし
マンガン|Mn mg 0.041 下限記載なし-0.24-上限記載なし
セレン µg 24.43 下限記載なし-15-上限記載なし
ヨウ素 µg 0.05(サプリ補完すべし 64–70-上限記載なし
ビタミンA(RAE) µg 932.77 下限記載なし-50–5000
ビタミンD µg 0.266 下限記載なし-0.35–37.6
ビタミンE mg 0.724 下限記載なし-2-上限記載なし
ビタミンK µg 37.54 下限記載なし-50-上限記載なし
ビタミンB1 mg 0.217 下限記載なし-0.28-上限記載なし
ビタミンB2 mg 0.583 下限記載なし-0.2-上限記載なし
ナイアシン mg 17.59 下限記載なし-2-上限記載なし
ビタミンB6 mg 0.909 0.10–0.125-上限記載なし
ビタミンB12 µg 2.967 下限記載なし-1.12-上限記載なし
葉酸 µg 94.40 30–37.6-上限記載なし
パントテン酸 mg 3.463 0.23–0.29-上限記載なし
ビタミンC mg 5.786 -記載なし
タウリン※5 mg 80~90 16-20-上限記載なし

※1NRCは左から【下限(最低量)】ー【推奨量】ー【上限(最大量)】

※2獲物モデルは骨・Ca添加なしの肉+内臓のみで比較。Caは別途(炭酸Ca/クエン酸Ca等)で補正すべき。

※3八訂(2023)には「塩化物(Cl⁻)」の欄はない。(食品成分表に載っているのは主にナトリウム(Na)と食塩相当量)
NaがNaCl由来という実務近似で Cl = Na × 1.541 と推定(評価用途には十分実用的)

※4係数の別表現:「食塩相当量(g) = Na(mg) × 2.54 ÷ 1000」「Cl(g) ≈ 食塩相当量(g) × 0.607」⇒ Cl(mg) ≈ Na(mg) × 1.541
注意:肉中のNaがすべてNaCl由来とは限らないため、Clは近似値(ただし実務のNRC充足チェック用途には十分実用的)

※5.日本の成分表は「エネルギー産生栄養素」と「ビタミン・ミネラル」が中心で、遊離アミノ酸(タウリン・カルニチンなど)は収載対象外。米国 USDA にも八訂(2023 日本食品標準成分表)にはタウリンの欄がないので、 UCD(University of California, Davis)獣医学部や、日本の研究者(例えば 食品総合研究所のタウリン含量調査)の実測データから取得。

獲物モデル200kcal:部位別・栄養寄与の内訳(八訂ベース)

指標 単位 鶏むね(皮なし)128.5g 鶏ハツ32.3g 鶏レバー5.0g 合計(200kcal)
エネルギー kcal 134.925 60.078 5.000 200.003
たんぱく質 g 29.941 4.683 0.945 35.569
脂質 g 2.441 5.006 0.155 7.603
-アラキドン酸 g 0.02 0.09 0.08
-リノール酸 g 0.26 0.69 0.67
-DHA g 0 0.01 0.01
-EPA g 0 0 0.03
食塩相当概算 mg 146.8 69.72 10.79 227.31
-Na mg 57.825 27.455 4.250 89.530
-Cl⁻概算 mg 89.1 42.3 6.55 138
K mg 475.450 77.520 16.500 569.470
Ca mg 5.140 1.615 0.250 7.005
Mg mg 37.265 4.845 0.950 43.060
P mg 282.700 54.910 15.000 352.610
Fe mg 0.385 1.647 0.450 2.483
Zn mg 0.899 0.743 0.165 1.807
Cu mg 0.026 0.103 0.016 0.145
Mn mg 0.026 0.000 0.017 0.042
セレン µg 21.845 0.000 3.000 24.845
ヨウ素 µg 0.000 0.000 0.050 0.050
クロム µg 0.000 0.000 0.050 0.050
モリブデン µg 2.570 0.000 4.100 6.670
ビタミンA(RAE) µg 11.565 226.100 700.000 937.665
ビタミンD µg 0.129 0.129 0.010 0.268
ビタミンE mg 0.385 0.323 0.020 0.728
ビタミンK µg 20.560 16.473 0.700 37.733
ビタミンB1 mg 0.129 0.071 0.019 0.219
ビタミンB2 mg 0.141 0.355 0.090 0.587
ナイアシン mg 15.420 1.938 0.225 17.583
ナイアシン当量 mg 21.845 3.036 0.450 25.331
ビタミンB6 mg 0.822 0.068 0.033 0.923
ビタミンB12 µg 0.257 0.549 2.200 3.006
葉酸 µg 16.705 13.889 65.000 95.594
パントテン酸 mg 2.467 1.424 0.500 4.392
ビオチン µg 4.112 0.000 11.500 15.612
ビタミンC mg 3.855 1.615 1.000 6.470

※八訂(2023)100g成分からの重量按分。合計は丸めの都合で±0.01程度の差が出る。Clは八訂に欄がないため、NaがNaCl由来という実務近似で Cl = Na × 1.541 と推定(評価用途には十分実用的)

鶏むね肉(皮なし)・鶏ハツ・鶏レバー 100gあたり成分比較(八訂・2023)

区分 成分 鶏むね(皮なし) 鶏ハツ 鶏レバー
一般成分 エネルギー (kcal) 105 186 100
水分 (g) 74.6 66.3 76.0
たんぱく質 (g) 23.3 14.5 18.9
脂質 (g) 1.9 15.5 3.1
アラキドン酸(g) 0.02 0.09 0.08
リノール酸(g) 0.26 0.69 0.67
DHA(g) 0 (痕跡) 0.01 0.03
EPA(g) 0 (痕跡) 0 0.01
灰分 (g) 1.0 1.0 1.3
無機質 Na (mg) 45 85 85
Cl(mg)概算 69 131 131
食塩相当(NaCl) 114 216 216
K (mg) 370 240 330
Ca (mg) 4 5 5
Mg (mg) 29 15 19
P (mg) 220 170 300
Fe (mg) 0.3 5.1 9.0
Zn (mg) 0.7 2.3 3.3
Cu (mg) 0.02 0.32 0.32
Mn (mg) 0.02 0.00 0.33
Se (µg) 17 0 60
Mo (µg) 2 0 82
I (µg) 0 0 1
ビタミン ビタミンA (RAE, µg) 9 700 14,000
ビタミンD (µg) 0.1 0.4 0.2
ビタミンE (mg) 0.3 1.0 0.4
ビタミンK (µg) 16 51 14
ビタミンB1 (mg) 0.10 0.22 0.38
ビタミンB2 (mg) 0.11 1.10 1.80
ナイアシン (mg) 12.0 6.0 4.5
ナイアシン当量 (mg) 17.0 9.4 9.0
ビタミンB6 (mg) 0.64 0.21 0.65
ビタミンB12 (µg) 0.2 1.7 44.0
葉酸 (µg) 13 43 1300
パントテン酸 (mg) 1.92 4.41 10.00
ビオチン (µg) 3.2 230
ビタミンC (mg) 3 5 20

出典:文部科学省「日本食品標準成分表 八訂(2023年版)」

100g当たりタウリン値(代表的な一次/レビュー情報)

  • 鶏むね(皮なし・生):およそ 5–25 mg/100g(=ライトミート)ccjm.orgWebMD

  • 鶏ハツ(生)~170 mg/100g(実測レポートの代表値)nutrivore.com

  • 鶏レバー(生)~110 mg/100g(食材データの代表値)dailydogfoodrecipes.com
    ※文献により幅があり(加熱・凍解・個体差で変動)。精度優先ならUCDの実験データも参照可。vetmed.ucdavis.edu

200kcalモデルでの内訳(計算)

 

獲物モデル vs NRC(200kcal基準)総括

前提:獲物モデルは 鶏むね皮なし128.5g+鶏ハツ32.3g+鶏レバー5.0g を200kcalに正規化。NRCは2006年版・成猫維持の/1000kcal基準を200kcal換算(×0.2)にした比較。

数値比較(200kcalあたり)

指標 獲物モデル NRC基準(200kcal換算) 評価
エネルギー 200 kcal 基準化
たんぱく質 35.56 g 8–10 g 十分充足(高P)
脂質 7.61 g 4.5–16.5 g 範囲内(やや低め)
ナトリウム Na 89.53 mg 32–34 mg 高め
カリウム K 569 mg 260 mg 高め
カルシウム Ca 7 mg 80–144 mg 不足
マグネシウム Mg 42.36 mg 10–20 mg 十分
リン P 346.5 mg 70–128 mg
Ca:P比 ≈0.02 : 1 1.1–1.3 : 1 要補正(Ca追加)
鉄 Fe 2.44 mg 4 mg やや低め※
亜鉛 Zn 1.78 mg 3.7 mg 低め※
銅 Cu 0.143 mg 0.24 mg 低め※
マンガン Mn 0.041 mg 0.24 mg 低め※
ビタミンA(RAE) ≈933 µg 50–5,000 µg 十分(過剰域に遠い)
ビタミンD 0.266 µg 0.35–37.6 µg やや不足
ビタミンE 0.724 mg 2 mg 不足気味
ビタミンK 37.5 µg 50 µg わずかに不足
ビタミンB1 0.217 mg 0.28 mg わずかに不足
ビタミンB2 0.583 mg 0.2 mg 十分
ナイアシン 17.59 mg 2 mg 十分
ビタミンB6 0.909 mg 0.10–0.125 mg 十分
ビタミンB12 2.97 µg 1.12 µg 十分
葉酸 94.4 µg 30–37.6 µg 十分
パントテン酸 3.463 mg 0.23–0.29 mg 十分
タウリン ≈83–90 mg 16–20 mg 十分

※微量ミネラル(Fe/Zn/Cu/Mn)は、魚・赤身・貝類・卵黄・適切なサプリで補正が容易。
脂溶性ビタミンD/Eは魚(青魚・卵黄)や補助サプリでの上積みを推奨。

総括

  • 劣る点は「手間と管理」だけ。栄養プロファイル自体は、NRCの最低〜推奨水準を自然にカバー。
  • 骨を入れない場合の決定的な弱点はCa不足とCa:Pの崩れ。炭酸Ca/クエン酸CaでCa:P=1.1–1.3に補正すれば解決。
  • ビタミンA・B群・タウリン・AA(アラキドン酸)は臓器で十分確保。EPA/DHAは魚で補う前提。
  • Na・Kはやや高め傾向。塩(NaCl)の扱いは腎・心の状態を見ながら微調整。健常なら問題なし。
    ※塩分参考|猫に塩分は危険?鰹節は塩分が心配?猫のナトリウム耐性 
    ※塩分参考|猫のナトリウム制限が招く危険

NRCの数値は「最終摂取時点」の基準か?

NRCの基準値は猫が最終的に摂取すべき栄養素量(ME基準 /1000kcal)。フードメーカーは加工損失を見込み、製造前に多めに添加して、最終製品でこの値を満たすよう設計。

実務メモ(手作りを安定化)

  1. Caは炭酸Ca≈1.0g/200kcal(Ca:P=1.2:1目安)で起点設定。便や検査で微調整。
  2. 週2の臓器レス魚日を入れてビタミンAの過剰リスクを緩める(レバーは5g×週2~MAX4で十分)。
  3. 不足しやすいD/E/微量ミネラルは、魚・卵黄・赤身・貝類・小量サプリで穏やかに補う。

データソース:日本食品標準成分表 八訂(増補2023)に基づく重量按分、NRC 2006(成猫維持)の/1000kcal基準を200kcalへ換算。タウリンは代表的実測文献値の中央値を採用。

まとめ

ここまで比べてきて思ったこと「NRCはどうやってこの基準の数値を導き出したのか=獲物から」だよなぁと。今日はざっくりがテーマだからざっくり調べてみた。ら・・・

NRCの数値の導かれ方(ざっくり歴史)

  1. 初期(1950〜70年代)

    • 実験猫に「精製食」や「半合成飼料」を与えて、欠乏症が出るかどうかを観察。

    • 例えば「タウリンを抜いたら失明」「アラキドン酸を抜いたら繁殖不全」みたいな欠乏実験。

    • 「これ以上は必要だ」とわかった最小量が、そのままMinimum Requirement (MR)

  2. その後(1980〜90年代)

    • 実験データだけじゃ限界がある → 「自然の食性=獲物プロファイル」を参考に。

    • 野生猫や給餌された猫の血液・組織分析から「実際どのくらい摂ってるか」を測る。

    • これが推奨量 (RA) の設定の根拠に。

  3. 2006年版 NRC

    • 「精製食での欠乏実験」+「獲物の平均栄養プロファイル」+「安全マージン(UL)」を組み合わせて策定。

    • 実際に本に書いてあるけど、多くの表の脚注に “based on purified diet studies in growing kittens” とか “derived from prey composition” と明記。

  • MR(必要最小量)=欠乏実験から

  • RA(推奨量)=獲物プロファイル+観察データ+安全係数

  • UL(上限)=毒性実験+ヒトや他動物データの類推

「結局 NRC って獲物をベースに作ってるんじゃん」ってことかな。それらをペットフードとして売るために最低限の基準数値化。(でももう古いよね。)

NRCリン基準が「低すぎる」理由

  1. タンパク質前提の違い

    • NRCは「精製食+低タンパク前提」で必要量を算出している。

    • だからリンも「その低タンパ量に見合った最低限」しか設定されていない。

    • 一方、獲物モデルは**高タンパ(=高リン)**が基本だから、必然的にリンも多くなる。

  2. 安全域を広く取っている

    • リン過剰の害(特に腎疾患リスク)を懸念して、意図的に低めに設定

    • 実際は野生猫はもっと高リンを摂取していても健康でいられる。

  3. Ca:P比に依存

    • NRCはリン単独よりも「Caとの比率」を重視している。

    • だから「リン低め・Caも低め」で比率1.1〜1.3 : 1を守ればOKという発想。

つまり、リンが低すぎるのではなく、タンパクを低く見積もりすぎた結果リンも引きずられた。(→NRC 2006基準に対する最新研究での見直し示唆 – )
この理解があると「NRCは欠乏症防止の“最低限”、獲物は健康維持の“実態”」という整理になるが。(タウリンなんて特に)

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