ハカセ×MIA人間と猫のカラダから読み解く対談シリーズ Vol.5
免疫の暴走──アレルギー反応のメカニズム
MIA ハカセ、最近、アレルギーの人が本当に増えましたよね?
ハカセ そうですね。花粉症、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎…国民病と言っても過言ではありません。でも、アレルギーって実は免疫の過敏さや制御の破綻が原因なんです。
MIA 免疫の制御が壊れちゃうってことでしょうか?
ハカセ 一言で言うと、免疫が無害な物質を敵と勘違いすることなんです。本来は細菌やウイルスを攻撃する仕組みなのですが、花粉や食べ物のタンパク質を異常に敵視してしまう。これがアレルギーの始まりです。
MIA 敵と思い込んだらどうなるんですか?
ハカセ まずIgE抗体という特殊な抗体を作るんです。このIgEは肥満細胞や好塩基球という細胞にくっつく。ここが地雷を埋めている状態ですね。まだ爆発はしていません。
MIA 地雷ですか、、、その爆発はどうやって起きるのでしょうか?
ハカセ 次に同じアレルゲン、例えば卵のタンパク質や花粉が体に入ってくると、そのIgEが結合して、肥満細胞がドカン!とヒスタミンを放出するんです。このヒスタミンが血管を広げたり、神経を刺激したりして、かゆみ、鼻水、咳、じんましんを起こすわけです。
MIA つまりIgE→肥満細胞→ヒスタミンって流れですね?
ハカセ それが典型的な即時型アレルギー反応です。だから症状が出るのが早いんです。数分から数十分で出ることが多いですね。
MIA じゃあ、食べ物でお腹を壊すのもアレルギーですか?
ハカセ それは場合によりますね。免疫が関与する反応ならアレルギー、例えば牛乳タンパクで下痢や血便が出る場合。消化や代謝の問題なら不耐性、例えば乳糖不耐症で下痢が起きる場合。同じ下痢でも仕組みが全然違うんです。
MIA ハカセ、ちょっと気になったんですけど、アレルギーって何に対して起こるんですか?食べ物全部がアレルゲンになりうるんですか?
ハカセ いい質問ですね!実は基本的にアレルギーは「タンパク質」に対して起こると考えていいんです。
MIA えっ、タンパク質だけですか?脂質とか糖質はどうなんですか?
ハカセ その疑問、多くの人が持っています。アレルギーは免疫が異物を「抗原」として認識することで始まりますよね。抗原になれるのは、免疫細胞が「掴めるサイズ」と「特徴的な立体構造」を持つ分子なんです。それに当てはまるのがタンパク質、あるいはポリペプチド、つまりある程度大きいアミノ酸の鎖なんですよ。
MIA じゃあ、脂肪酸やビタミン、糖質は?
ハカセ それらは単体では小さすぎて抗原にならないんです。ただし、酸化物や結合体が間接的に炎症を悪化させることはあります。でも、それは厳密には「アレルギー」とは違うメカニズムですね。
MIA でも、金属アレルギーとか聞いたことがありますよ?あれはタンパク質じゃないですよね?
ハカセ 鋭い指摘です!金属アレルギーは例外的なケースなんです。ニッケルやクロムなどの金属イオンは、そのままでは小さすぎて抗原になれません。でも、金属イオンが体内タンパク質と結合して「新しい抗原」になるんです。つまり、結局はタンパク質が関わっているわけですね。
MIA なるほど!では例えば薬のアレルギーも同じですか?
ハカセ その通りです。小分子の薬はそのままでは小さすぎますが、体内タンパクと結合して「ハプテン(半抗原)」として働くんです。これも最終的にはタンパク質との複合体が抗原になっているわけです。
MIA 猫の食物アレルギーで「小麦アレルギー」とか「米アレルギー」って聞くのはどういうことなんですか?
ハカセ 炭水化物(米・小麦)に「アレルギー」と言われることもありますが、実際には「タンパク質の断片」が原因なんですね。例えば、小麦のグルテンはタンパク質ですよね。米にもアルブミンなどのタンパク質が含まれています。猫の典型的な食物アレルギーは、やっぱりタンパク質、つまり鶏肉・牛肉・魚・乳製品・卵が中心なんです。
MIA つまり、結論としては?
ハカセ まとめるとこうなります:
アレルギーの本体は「タンパク質」への免疫反応です。小分子である脂肪酸・ビタミン・糖などは直接のアレルゲンにはなりません。例外的に「金属や薬剤」が体内タンパクとセットで抗原化することがありますが、それも最終的にはタンパク質が関与しているんです。
MIA なるほど!だから、タンパク源を固定しすぎないようにローテーションすることが大事なんですね。
ハカセ まさにその通り!同じタンパク質に繰り返し暴露されることで、感作のリスクが高まります。だから、多様なタンパク源をバランスよく摂ることが、アレルギー予防の基本戦略なんです。
MIA なるほど…。そもそも免疫寛容ってなんですか?
ハカセ 簡単に言うと、体がこれは攻撃しなくていいって学習する仕組みです。食べ物とか花粉とか、本来は無害なものをスルーできる能力のこと。これが正常に働いていれば、アレルギーは起きないはずなんです。
MIA じゃあ、なんでそのスルー機能が壊れちゃうんですか?
ハカセ いくつか理由があります。大きく分けると4つですね。
第一にバリア機能の破綻。腸や皮膚の粘膜が傷んでいると、タンパク質が丸ごと入ってきやすい。本来は分解されてから出会うはずが、未分解のまま免疫細胞に見られるとこれは危険物かも!と誤認されるんです。
第二に遺伝的素因。IgEを作りやすい体質の人や動物がいて、免疫のバランスがIgE方向に傾きやすいようにプログラムされています。
第三に免疫のバランス崩壊。普通はTh1が感染防御、Th2がアレルギー系のバランスが取れています。幼少期に感染が少なすぎるとTh2に傾きやすく、アレルギー体質になりやすい。これを衛生仮説と言います。
第四に環境要因。腸内細菌の乱れ、加工食品、抗生物質乱用、ストレスなども寛容を壊します。
MIA そのIgEはどうやって作られるんですか?
ハカセ 無害なタンパク質を危険と誤認したとき、免疫細胞の樹状細胞がそれを拾ってT細胞に見せます。その時、炎症性サイトカインが多いとTh2細胞へ誘導されるんです。そしてTh2細胞はB細胞にIgEを作れ!って命令を出す。これがIgE産生の始まりです。
MIA つまり粘膜バリアが弱っている×Th2に傾きやすい環境が重なるとIgEができちゃうんですね?
ハカセ まさにその通り!健康な腸や皮膚なら無害物はスルーされます。でも傷んだ腸や皮膚+炎症環境だとIgEを作るスイッチが入ってしまうんです。
MIA アレルギーを予防なんてできるのでしょうか。
ハカセ 核心は腸と皮膚を守り、免疫のバランスを保つことです。具体的には、まず腸ケアが重要ですね。
発酵食品やプロバイオティクスが効果的です。適量の乳酸菌、納豆菌、ビフィズス菌などは腸内環境を整え、腸内細菌の多様性が免疫寛容の基盤になります。
食物繊維も大切です。オクラ、なめこなどの粘性食材は腸内細菌に栄養を与え、粘膜バリアをサポートします。
適度な水分補給も忘れずに。水分が十分にあると腸粘膜が健康に保たれ、バリア機能が維持されやすくなります。
MIA 食事選びで気をつけることは?
ハカセ やはりタンパク源を固定しすぎないことです。同じタンパク質ばかり、例えば毎日鶏肉だけは感作リスクを上げます。数種類をローテーションで与えるのが良いですね。
過剰に加工されたフードも避けましょう。強い加熱、添加物、酸化脂質は腸を荒らしやすく、免疫寛容を壊す要因になります。低温調理、冷凍保存、添加物少なめのものを選んでください。
MIA 生活環境で気をつけることは?
ハカセ ストレスケアが重要です。ストレスで腸バリアが壊れやすくなります。安心できる場所、安定したリズムを保つことが大切です。
また、適度な刺激と運動も必要です。活発に動くことで免疫バランス、Th1とTh2のバランスが整いやすくなります。
そして、不必要な薬剤の乱用を避けることです。抗生物質やステロイドは必要なときは使いますが、漫然と使い続けると腸内環境、免疫寛容を壊してしまいます。
MIA その他ありますか?
ハカセ 実は、アレルゲンの最初の侵入経路は皮膚なんです。生後1年までの乳児は体内にIgE抗体がほとんどないナイーブな状態。しかし、引っ掻き傷や乾燥などによるかぶれなどを通して異物が皮膚から体内に入り、それが免疫機能によって敵と判断されるとIgE抗体が次々と作られます。
だから乳幼児の肌をしっかり保湿してバリア機能を高めることで、アレルギー発症のリスク低下が期待できることが研究で示唆されています。
MIA 今日は難しい話ですが、なんとな~くわかるような、といった感じです(笑)
ハカセ そういった感覚大事ですね(笑)では今日の話をまとめましょう:
アレルギー反応のメカニズム
・IgE抗体が肥満細胞にくっつく(地雷を埋める)
・アレルゲンが入るとヒスタミン放出(爆発)
・数分〜数十分で症状(即時型)
アレルゲンの正体
・基本的に「タンパク質」に対して起こる
・脂質・糖質は直接の原因にならない
・金属・薬剤は体内タンパクと結合して抗原化
免疫寛容が破れる4つの理由
・バリア機能の破綻(腸・皮膚の傷)
・遺伝的素因(IgEを作りやすい体質)
・免疫バランスの崩壊(Th2への偏り)
・環境要因(腸内細菌の乱れ、ストレス)
予防の核心
・腸と皮膚を守る
・タンパク源のローテーション
・発酵食品・食物繊維で腸内環境を整える
・ストレス管理
・薬剤の適切な使用
MIA アレルギーって、免疫が敵を間違えちゃう病気だったとは。
ハカセ その通りです。大切なのは、攻撃する免疫ではなく許す免疫を育てる意識です。多様性×腸内環境×ストレスの少ない暮らしが、免疫寛容を守る鍵なんです。機会があれば、猫のアレルギー最前線について、実例を交えてお話ししましょう。
MIA 次回も楽しみにしています。今日はありがとうございました。
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