- AGEs(終末糖化産物)は高温加工により形成され、慢性疾患や老化促進との関連性が研究で示されている化合物群
- ペットフードでは、ウェットフード(レトルト処理)が最もAGEs含有量が高く、次にエアドライフード、ドライフード、最小限加工食品の順となる
- 犬のHMF摂取量は人間の129倍、猫は40倍と、ペットフードのAGEs含有量は人間の食品より大幅に高い
- ドライフードの熱押出成型とウェットフードのレトルト処理は、どちらも120-150℃の高温処理でAGEs形成を促進
- 人間の食事では低温湿式調理、酸性マリネード使用、植物性食品増加によりAGEs摂取を大幅に削減できる
- 現在の研究は主に観察研究であり、AGEsと疾患の因果関係確立には今後のランダム化比較試験による検証が必要
ペットフードとAGEs(終末糖化産物)
AGEs(終末糖化産物)とは
Advanced Glycation End Products(AGEs)は、還元糖とタンパク質、脂質、または核酸の遊離アミノ基との間で起こる非酵素的反応によって形成される化合物群である。この反応はメイラード反応とも呼ばれ、食品の褐変反応として知られている。
AGEsは体内で自然に生成されるが、現代の食事は主に加熱処理されており、その結果、高レベルのAGEsを含んでいる。AGEsは老化毒素(gerontotoxins)として考えられており、タンパク質同士を架橋することで組織の硬化、酸化ストレス、炎症を引き起こし、老化プロセスを加速させると考えられている。
乾燥した熱による処理は、食品カテゴリー全体で未調理状態の10倍から100倍以上の新しいAGE形成を促進する。グリル、フライ、トースト、ベーキング、ロースト、炒めもの、ブロイル、シアリングといった乾燥した高温での調理方法が特に問題となる。
AGEsが健康に与える影響
炎症と慢性疾患
AGEsは心疾患、糖尿病、肝疾患、アルツハイマー病、関節炎、腎不全、高血圧などの慢性疾患と関連している。AGEsは、酸化ストレスと炎症の両方に影響を与え、また酸化ストレスによって影響を受けるため、糖尿病の心血管合併症において重要な役割を果たすことが広く認められている。
老化の加速
AGEsは骨、関節、骨格筋に蓄積し、加齢に伴う骨粗鬆症、変形性関節症、サルコペニアの発症に重要な役割を果たしている。AGEsは脳にも影響を与え、加齢に伴う脳の緩やかな萎縮を加速させ、シルトゥイン防御機能を抑制するようである。
高AGEレベルの高齢者は、認知機能の低下が加速的に進行することが研究で示されている。アルツハイマー病患者の脳にも高レベルのAGEsが発見されている。
RAGEレセプターとの相互作用
AGEsの病的作用は、細胞表面受容体との結合や体内タンパク質との架橋により、その構造と機能を変化させることに関連している。RAGE(receptor for advanced glycation end products)と呼ばれる受容体がAGEsと結合すると、核因子κB(NF-κB)の活性化を介して炎症に関与する複数の遺伝子の制御に影響を与える。
ドライフード(ペットフード)におけるAGEs問題
製造プロセスでのAGEs形成
ペットフード業界では、ドライフードの製造に通常120-150℃、缶詰(レトルト)食品の製造に120-130℃の温度が使用される。メイラード反応は90℃以上で起こり、処理温度が上がるにつれて加速する。
ほとんどのドッグフードは高温処理方法を使用して製造される。ドライフードの場合は熱押出、ウェットフードの場合はレトルト処理で、これらは病原体を死滅させ、保存期間を延長するよう設計されている。この処理により、これらの有害なAGEsが生成されやすくなる。
科学的研究による実証
4つの異なる加工方法による比較研究
健康な犬を対象とした重要な研究では、以下の4つの異なる処理方法による食事のAGEs含有量が調査された:
| 食品タイプ | 略称 | 加工方法 | 処理温度 | 食事AGEs含有量 | 血漿AGEs濃度 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 超加工缶詰ウェットフード | WF | レトルト処理 | 120-130℃ | 最高 | 最高 | 高温高圧処理による最大AGEs形成 |
| 超加工ドライフード | DF | 熱押出成型 | 120-150℃ | 中程度 | 中程度 | 一般的なキブル、高温乾燥処理 |
| エアドライフード | ADF | 低温乾燥 | 60℃(140°F) | 2番目に高い | 中~高 | 低温だが発酵用デキストロース添加が影響 |
| 軽く調理された食品 | MF | 最小限加工 | 40℃(105°F)で10時間→冷凍 | 最低 | 最低 | 最も自然に近い加工方法 |
研究結果の詳細
意外な発見:
- ウェットフード(WF)が最もAGEs含有量が高い
- エアドライフード(ADF)は低温処理にもかかわらず、2番目に高いAGEs含有量
- 最小限加工食品(MF)のみが著しく低いAGEs含有量を示した
ウェットフードのレトルト処理の問題
多くの人が「ウェットフードはドライフードより健康的」と考えがちだが、AGEs含有量の観点では正反対の結果となった。この原因はレトルト処理という製造方法にある:
レトルト処理の特徴:
- 超高温高圧処理:120-130℃の高温と15-20 psi(1-1.4 bar)の過圧力を同時に適用
- 長時間処理:10-120分間の長時間加熱(処理内容により変動)
- 密閉環境:缶やパウチに密封後に処理するため、水分が逃げずAGEs形成を促進
AGEs形成が最大化される条件:
- 高温+高圧+長時間の三重苦
- メイラード反応の意図的促進:レトルト処理は味覚向上のためメイラード反応を活用
- 水分保持:密閉容器内で水分が保たれるが、高温では逆にAGEs形成を促進
- 均一加熱:容器全体が同じ高温にさらされるため、AGEs形成が均一に進行
対照的に、ドライフードの熱押出成型は120-150℃だが処理時間が短く、水分が除去されるためAGEs形成がある程度抑制される。
エアドライフードの高AGEs含有量の原因: P. acidilactici発酵のために添加されたデキストロース(還元糖)が、加工条件下で完全に発酵されず、糖化反応の基質として残存したため。これにより、低温処理であってもドライフードより高いAGEs含有量となった。
AGEs含有量の比較
缶詰ペットフードには平均してFL、CML、HMF(フルクトースリジン、カルボキシメチルリジン、ヒドロキシメチルフルフラール)が最も多く含まれ(乾物ベースでそれぞれ4534、37、1417 mg/kg)、次にペレット食品、押出食品の順となった。
成人人間と比較すると、市販のドッグフードを摂取する犬のHMFの平均1日摂取量(mg/kg体重^0.75)は、西洋食を摂取する成人人間より代謝体重ベースで129倍高いと推定されている。猫の場合は40倍高い摂取量となる。
ペットの健康への影響
研究では、異なる加工方法のペットフードがAGEsの量に関連し、健康な犬の総血漿AGE濃度に影響を与えることが示された。高温で超加工された食品を摂取した犬は、血液と尿中のAGEレベルが高かった。
人間の食事におけるAGEs
一般的な食品のAGEs含有量
脂肪とタンパク質が豊富な動物由来食品は一般的にAGEが豊富で、調理中の新しいAGE形成が起こりやすい。肉は朝食シリアルのような高度に加工された食品の約20倍、新鮮な果物や野菜の約150倍のAGEsを含んでいる。
高AGEs食品
- 肉類(特に赤身肉)
- 特定のチーズ
- 揚げ卵
- マーガリン
- 油類、ナッツ類
- 揚げ物、高度加工食品
低AGEs食品
- 野菜、果物
- 全粒穀物
- 牛乳
- 豆類
推奨される1日摂取量
研究者は、人々が1日に5,000〜8,000 kU/day(CML換算)未満の食品を摂取するよう努めるべきだと推定している。参考として:
- ビッグマック1個:7,800 kU
- ホットドッグ1個:10,143 kU(ブロイル調理)→ 7,000 kU未満(ボイル調理)
- ピザ3.5オンス:6,825 kU
- リンゴ1個:18 kU
AGEsと調理温度の関係
| 調理法 | 温度範囲 | AGEs形成レベル | 具体例 | 日本の類似調理法 |
|---|---|---|---|---|
| ポーチング | 85-95℃ | 最低 | 温泉卵、ポーチドエッグ | 煮魚、湯豆腐、茶碗蒸し |
| ボイリング | 100℃ | 低 | 茹で卵、茹で野菜 | 茹でる、煮物、しゃぶしゃぶ |
| スチーミング | 100℃ | 低 | 蒸し鶏、蒸し野菜 | 蒸し料理、せいろ蒸し |
| シチュー・煮込み | 85-100℃ | 低 | ビーフシチュー、ポトフ | 肉じゃが、おでん、角煮 |
| マイクロ波 | 内部加熱 | 中程度 | 電子レンジ調理 | レンジ調理全般 |
| ベーキング | 180-200℃ | 高 | オーブン焼き | オーブン料理 |
| ロースティング | 200-220℃ | 高 | ローストチキン | オーブン焼き |
| フライング | 160-180℃ | 高 | 揚げ物 | 天ぷら、から揚げ |
| グリリング | 200-300℃ | 非常に高 | BBQ、グリル | 焼き鳥、焼肉 |
| ブロイリング | 220-260℃ | 非常に高 | オーブン上火焼き | 魚焼きグリル |
| シアリング | 250-300℃ | 非常に高 | 肉の表面焼き | 強火で焼き目をつける |
従来調理法との比較
| 調理法 | 温度 | AGEs形成 | 食感 | 栄養保持 |
|---|---|---|---|---|
| 真空低温調理 | 55-85℃ | 最低 | 理想的 | 最高 |
| ポーチング | 85-95℃ | 低 | 良好 | 良好 |
| ボイリング | 100℃ | 低 | 普通 | 中程度 |
| グリル | 200-300℃ | 非常に高 | 表面焦げ | 最低 |
真空低温調理が有効なのは:
- 肉、魚、野菜などの生鮮食材
- 調理プロセスでAGEs形成を抑制
真空低温調理では解決できないのは:
- 既に加工済みの乳製品
- 製造段階でAGEsが形成済みの食品
※AGEs削減は「調理法の改善」と「食材選択の見直し」の両方が必要。真空低温調理は素晴らしいツールだけど、万能ではない。
重要なポイント
AGEs形成の境界線:
- 90℃以下:AGEs形成はほとんど起こらない
- 100-120℃:AGEs形成が始まる(ペットフード製造温度帯)
- 180℃以上:AGEs形成が急激に増加
- 200℃以上:AGEs形成が最大化
調理時間の影響:
- 同じ温度でも、調理時間が長いほどAGEs形成が進行
- 短時間の高温 vs 長時間の低温では、後者の方がAGEs形成を抑制
水分の重要性:
- 湿式加熱(水分あり):AGEs形成を大幅に抑制
- 乾式加熱(水分なし):AGEs形成を促進
AGEsを減らす実践的方法
調理方法の改善
最も効果的なAGEs削減方法は調理方法の改善である:
- 低温調理の採用
- 中程度の低温で調理した卵は、同じ方法でも高温で調理した卵の約半分のAGEsしか含まない
- ポーチドまたは蒸した鶏肉は、ローストまたはブロイルした鶏肉の4分の1未満のAGEsしか含まない
- 湿式加熱の活用
- 煮込み、ポーチング、ボイリング、スチーミングを選ぶ
- フライ、ブロイル、グリル、ローストはより多くのAGEsを生成する
- 調理温度の管理
- 180℃以下での調理でAGE形成を削減
- 250°F(120℃)以下での調理を推奨
マリネーションの効果
肉を調理する際、レモン汁や酢を使用したマリネードでのAGE形成が50%以上削減されることが研究で示されている。酢やレモン汁などの特定のマリネードは肉を柔らかくするだけでなく、より酸性の環境を作り出し、食事AGEsの存在を減らす。
食材選択のガイドライン
- 植物性食品の増加
- 野菜、果物、全粒穀物の摂取を増やす
- 固形脂肪、脂肪肉、全脂肪乳製品、高度に加工された食品の摂取を減らす
- 低脂肪製品の選択
- 全脂肪チーズより低脂肪チーズを選ぶ
- 低脂肪乳製品を選択
- 加工食品の制限
- クラッカー、チップス、クッキーなどの乾燥加工食品を制限
- 揚げ物、ファストフードを避ける
AGEs阻害サプリメントの可能性
現在の研究では、特定の天然化合物がAGEs形成を阻害する可能性が示されている。例えば、熟成ニンニクエキスに含まれるS-allyl cysteineは、AGEs形成を予防する効果が報告されている。ただし、これらのサプリメントの長期的な効果や安全性については、さらなる研究が必要である。
まとめ
ペットフードや高温加工食品に含まれるAGEsは、人間とペットの両方において慢性疾患や老化の進行と関連性が示されている。特にペットフードにおいては、市販のドライフードやウェットフードが人間の食品よりもはるかに高いAGEs含有量を示すことが科学的研究で明らかに。
ペットの健康を考える場合、市販のドライフードやウェットフードのAGEs含有量を理解し、可能な限り低温で調理された、あるいは最小限の加工しか施されていない食品を選択することが重要。(人間の食事においても同様)
- ウェットフードが意外に – 多くの人が「ドライフードより健康的」と思いがちだが、実際はAGEs含有量が最も高い
- エアドライフードまで意外な結果 – 低温処理なのに2番目に高いAGEs含有量。これは添加された発酵用デキストロース(糖)が完全に消費されず、糖化反応の原料として残ったため
- 最小限加工のみが安全 – 40℃という低温で短時間処理し、すぐに冷凍する方法のみがAGEs含有量を大幅に削減
- 温度だけじゃない – 単純に加工温度だけでなく、原材料(特に添加糖)も大きく影響する
重要な注意点: 現在のAGEsに関する研究の多くは観察研究に基づいており、AGEsと慢性疾患との間の関連性は示されているものの、明確な因果関係については今後のランダム化比較試験(RCT)による検証が必要。研究の進展により、推奨事項が変更される可能性があることを理解しておくこと。
疑問
キブル(ドライフード)の方が糖質(でんぷん・炭水化物)は高いはずだ。それなのにAGEsが低い結果になっているが。変だな。次の記事でもう少し深堀してみよう。
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