猫の糖代謝が特異な理由
✓ 常に糖新生がメインエンジン(炭水化物を食べていても)
✓ グルコキナーゼが欠損 → 血糖値の急変動が苦手
✓ インスリン感受性が低い(糖尿病になりやすい)
✓ グルコース→脂肪への変換が乏しい
✓ エネルギー源の中心はアミノ酸(たんぱく質)
インスリン感受性
✓「糖が細胞に入れるかどうか」の鍵。特に猫は“インスリン抵抗性”が強めで、糖尿病リスクにも直結。「炭水化物をたくさん食べる」と一気に血糖コントロールが崩れる。
✓ 人と犬は比較的感受性が高く、糖質を主軸とした代謝が可能。
インスリン抵抗性が起こると?
✓同じ量のインスリンでは血糖が下がらない
✓膵臓は「もっとインスリン出さなきゃ」と頑張ってしまう
✓結果:高インスリン血症 → 太る・疲れる・糖尿病のリスクUP
血糖維持のメカニズム(血糖恒常性)
✓どんな仕組みで「低血糖を防いでいるか」は、代謝戦略の差が如実に出る。
✓猫は絶えず糖新生に頼る、人は食後のグルコース吸収が主軸。
※rT3|代謝抑制ホルモン(T3のブレーキ)代謝低下・体温低下・エネルギー節約モード
※インスリン抵抗性|インスリンが効きにくい状態 血糖が下がりにくくなり、糖尿病や肥満の原因に
| 項目 | 猫(ネコ科) | 犬(イヌ科) | 人(ヒト) |
|---|---|---|---|
| 主なエネルギー源 | たんぱく質(糖新生ベース) | 炭水化物+脂質+たんぱく質 | 炭水化物が中心 |
| インスリン感受性 | 低い(インスリン抵抗性が強い) | 中等度(高たんぱく時でも対応可能) | 高い(血糖の調整に柔軟に対応) |
| 血糖維持のメカニズム(恒常性) | 糖新生が常に活性(空腹・食後問わず) | 食後はグルコース吸収、空腹時は糖新生 | 食後は吸収、空腹時はグリコーゲン+糖新生 |
| グルコキナーゼ活性 | ほぼなし(血糖値上昇に鈍感) | 一部あり | 活性あり(血糖上昇を検知してインスリン分泌) |
| グルコース→脂肪変換能力 | 非常に弱い(リポジェネシス能力が乏しい) | 中等度(高糖質食では体脂肪増) | 強い(過剰な糖→中性脂肪) |
| 糖新生の主な材料と活性タイミング | アミノ酸が主材料/常に活性 | アミノ酸+乳酸/絶食時や運動時 | 乳酸・グリセロール・アミノ酸/空腹時に活性 |
| rT3との関係(代謝調整) | ストレスや絶食でT3低下・rT3上昇しやすい | 状況に応じて調整 | 慢性ストレスや低栄養でrT3優位になりやすい |
| 糖尿病リスク要因 | インスリン抵抗性・高たんぱく依存・肥満 | 高脂肪・肥満・遺伝 | 高糖質・インスリン分泌異常・肥満 |
猫の糖代謝から見えてくること
猫の糖代謝の特異性は、進化の過程で肉食動物として特化した結果といえる。常時稼働する糖新生システム、グルコキナーゼ欠損による血糖調節の脆弱性、そして強いインスリン抵抗性は、すべて「たんぱく質中心の代謝」に最適化された証拠である。
この代謝特性は、現代の飼い猫にとって重要な意味を持つ。炭水化物の多い食事は猫本来の代謝システムに負担をかけ、糖尿病や肥満のリスクを高める。一方で、適切なたんぱく質中心の食事は、猫の代謝システムを自然な状態で機能させ、健康維持につながる。
猫の糖代謝を理解することは、単に生理学的知識を得るだけでなく、猫の健康管理における食事選択の科学的根拠を提供する。「猫は小さな虎である」という言葉通り、その代謝システムも野生の肉食動物としての特性を色濃く残しているのである。
