猫と犬|膵臓機能の違い

膵臓の基本的な機能と役割

膵臓の役割

膵臓の役割は「食べ物の消化と血糖値の調節」。

消化酵素を分泌して栄養素を分解し、同時にインスリンやグルカゴンを分泌して血糖値をコントロールする、生命維持に不可欠な二つの機能を担っている。お腹の奥にある細長い臓器、胃の裏側で、十二指腸という小腸の最初の部分に囲まれるように位置している。

膵臓は「二刀流の臓器」と呼ばれる特別な臓器。消化を助ける働きと血糖値をコントロールする働きという、全く違う2つの大切な仕事をしている。

消化を助ける働き(外分泌機能)

膵液という消化液を作る

膵臓は毎日1.5-3リットルもの「膵液」という消化液を作っている。この膵液はアルカリ性で、胃酸で酸っぱくなった食べ物を中和して、消化酵素がよく働けるような環境を作る。

3つの重要な消化酵素

膵臓は3つの栄養素を分解する酵素を作っている。

炭水化物を分解する酵素

  • アミラーゼ:ご飯やパンなどのでんぷんを小さく分解する
  • 口の中にも同じ酵素があるが、膵臓のものはより強力である

脂肪を分解する酵素

  • リパーゼ:油や脂肪を細かく分解して吸収しやすくする
  • 胆汁と一緒に働いて、脂っこい食べ物を消化する

たんぱく質を分解する酵素

  • トリプシンとキモトリプシン:肉や魚のたんぱく質を小さく切る
  • 最初は「トリプシノーゲン」「キモトリプシノーゲン」という安全な形で作られ、腸に出てから活性化される

膵液が出る仕組み

食事をすると、脳が「食べ物が来た」という信号を膵臓に送る。同時に、十二指腸からも「消化液を出して」というホルモンが分泌され、膵液の分泌が始まる。この連携プレーによって、食べ物に合わせて適切な量の膵液が分泌される。

血糖値をコントロールする働き(内分泌機能)

ランゲルハンス島という特別な場所

膵臓の中には「ランゲルハンス島」という小さな島のような組織が約100-200万個も散らばっている。この島では、血糖値をコントロールするホルモンが作られている。

血糖値を調整する2つのホルモン

インスリン

  • 血糖値が高くなったとき(食事の後など)に分泌される
  • 糖分を細胞に取り込ませて、血糖値を下げる
  • 余った糖分を肝臓に貯蔵させる

グルカゴン

  • 血糖値が低くなったとき(空腹時など)に分泌される
  • 肝臓に貯めてある糖分を血液中に放出させる
  • 血糖値を上げる

この2つのホルモンがシーソーのようにバランスを取りながら、血糖値を70-110mg/dlという正常範囲に保っている。

その他のホルモン

  • ソマトスタチン:インスリンとグルカゴンの分泌を調整する「司令官」
  • 膵ポリペプチド:消化管の働きを調節する

膵臓の病気とその影響

消化機能に問題が起きると

膵臓から消化酵素が十分に出なくなると、以下のような症状が現れる。

  • 消化不良:食べ物がうまく消化できない
  • 脂肪便:脂肪が消化されずに便に混じって出る
  • 栄養不足:栄養素が吸収できなくなる

これは慢性膵炎や膵がんなどが原因で起こることがある。

血糖調整機能に問題が起きると

インスリンやグルカゴンがうまく働かなくなると、血糖値のコントロールができなくなる。

  • 1型糖尿病:インスリンを作る細胞が壊れてしまう
  • 2型糖尿病:インスリンが効きにくくなったり、分泌が減ったりする

猫と犬の膵臓の特徴

猫の場合

猫は脂肪に強い体質だが、膵炎になったときの症状がわかりにくいという特徴がある。人間や犬のようにはっきりとした症状が出ないため、気づくのが遅れることがある。主な症状は食欲がなくなることや嘔吐だが、他の病気でも起こる症状なので注意が必要。

犬の場合

犬は急性膵炎を起こしやすく、特に脂肪の多い食事が引き金になることが多い。症状ははっきりしていて、激しいお腹の痛み、嘔吐、下痢などが起こる。重症の場合は命に関わることもあるため、早急な治療が必要。

解剖学的構造の違い

項目
膵臓の位置・大きさ 胃と十二指腸の間に位置し、横に細長い。全体的に小さめ。 胃の後方にL字状に伸びる。猫より大きい。
膵管構造 主膵管が総胆管と合流。副膵管は通常退縮。 主膵管と副膵管が別々に開口。
胆管との関係 膵管と胆管が合流し、影響しやすい(三臓器炎) 膵管と胆管は別構造で、波及しにくい

膵外分泌機能の違い

項目
アミラーゼ活性 犬の1/20程度と低い。炭水化物消化に乏しい。 猫より高い。炭水化物を一定量消化可能。
リパーゼ活性 脂肪に耐性あり。脂肪制限食の有効性は不明。 脂肪が膵炎の誘因に。低脂肪食が推奨される。
酵素分泌の特徴 少量頻回食に適応。酵素は常時分泌。 食後に大量分泌。雑食に対応。
膵外分泌不全 稀に慢性膵炎後に発症。食欲不振・被毛の荒れ。 大型犬で多い。痩せ・脂肪便・多食など。

内分泌機能の違い

項目
糖代謝 糖新生優位。グルコキナーゼ活性が低い。 糖代謝対応。グルコキナーゼ活性あり。
糖尿病の型 2型類似。インスリン抵抗性あり。寛解も可能。 1型。インスリン必須。寛解は困難。
グルカゴン分泌 糖新生促進。高血糖傾向が主体。 同様。グルカゴノーマは稀。
腎性糖閾値 250〜300mg/dL 180〜220mg/dL

膵疾患の傾向

項目
膵炎の傾向 慢性膵炎が多い。症状が不明瞭。 急性膵炎が多い。嘔吐・腹痛など強い症状。
診断方法 fPL検査、エコーで難しい。総合判断。 cPL検査、エコーで判断しやすい。
膵外分泌不全 極めて稀。慢性膵炎後に発生。 大型犬に多い。若年でも発症。
膵腫瘍 稀。インスリノーマはほぼ見られない。 やや多い。中〜大型犬に発症。

治療・食事・サプリ対応の違い

項目
膵炎時の食事 絶食しない。少量頻回。脂肪制限不要。 嘔吐時は絶食。低脂肪食が主流。
消化酵素補充 EPI時に使用。日常では不要。 EPI時に必須。慢性膵炎でも使用例あり。
糖尿病治療 インスリン+高タンパク低糖質食。寛解あり。 インスリン必須。高繊維食。寛解なし。

 

まとめ

膵臓は「食べ物の消化」と「血糖値のコントロール」という2つの重要な働きを担う「二刀流の臓器」。消化酵素を分泌して栄養素を分解し、同時にインスリンとグルカゴンで血糖値を調整している。この2つの機能のどちらかに問題が起きると、消化不良や糖尿病などの深刻な病気につながる可能性がある。

 

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